あぁ、愛しむは遠く彼方の
在りし日の御空にそっと
雲翳る康寧の音よ
目に紅く染まる情緒に夜すがら
この道を駆け抜く声の
聞こえた残映を憶えている
陽の射す花風に息づく茜
季節を告ぐ足音がふと耳撫でて
目を開ければ映る夕紅も
眩しく小手かざす程に
ざわめいた此の場所が
好きだったの
桜の花に灯りを燈せ
縁を紡ぐ此処は華やいだ宮
袖を重ねて鼓動連ねる
篝の先で揺蕩う、さだめ無き身
あぁ、浅葱空、飾るは風
花冷えの黄昏時を
幾度繰り返せば良いのだろう
遠く聞こえた声も砂に融けて
空に触れ、焔に散った
あの日が今も心を綻ばせる
騒擾に揺らぐ息吹の傷跡
揺れる葉には鈍色の雨が瞬き
枯れ葉を湿らせた
濁らす水面は俗世を映し出す
それでも目に煌めく赤は
美しかった
桜の花に灯りを燈せ
朝日も褪せる此処は寂れた宮
虚に響く此の静けさは
鼓膜を揺らす離れぬ声となる
「もし、願いが叶うのなら、 奇跡なんて要らないから、どうか変わらぬ日々を」
そんな祈りは指先をすり抜けて届かないから
そんな震える声で叫ばないで
儚く消えた散る花びらも
終わりを抱いてこそ咲き誇るのに
枯れ野に独り残る此の身は
宿世も知らず此処で彷徨ったまま
桜の花に灯りを燈せ
此処は眠れぬ亡霊の巣食った宮
燃えぬ灯よ彼岸へ届け
還らぬ影を水屑の底から照らせ